動物病院の経営に興味がある人や今後開業を検討している人にとって、「どういった手順で開業するのか」や「どれくらいの資金が必要なのか」といった情報は必要不可欠です。そこで、「そもそも動物病院とはどういった施設なのか」といった基本的な知識を確認した上で
- 開業する際の注意点
- 開業に必要な手続き
- 必要な開業資金
について解説していきます。
動物病院とは?

そもそも動物病院とは、どういった施設を指すのでしょうか。
一言で表すと、動物病院とは獣医師が動物の治療をする病院のことを指します。
もちろん規模や診察できる動物の種類などは動物病院によって異なります。
また治療以外にもワクチン接種や健康診断、健康アドバイスなども行ってくれます。
このように、動物病院はペットが元気に過ごすためには必須の施設と言えるでしょう。
そして現在はコロナの影響で家で過ごす時間が増えたのでペットを飼う人が増えました。
それに伴い動物病院の需要は今後ますます高まっていくと考えられます。
しかし、だからといって十分に下調べをせずに動物病院を経営することはできません。
そこで「動物病院を開業する上でどのような点に注意しなければならないのか」について解説していきます。
動物病院は獣医師が治療やワクチン接種などをしてくれる、ペットの健康維持には必要不可欠な施設です。
動物病院開業の注意点

開業するにあたって最も注意しなければならない点は立地です。
というのも、どこでも動物病院を開業できるという訳ではないからです。
都市計画法で『用途地域』の分類が定められており、その中には動物病院を建てることができない地域があります。
なお用途地域と開業の可否は下記の通りです。
用途地域 | 動物病院開業の可否 |
第一・二種低層住居専用地域 | 動物病院の開業不可 |
第二種中高層住居専用地域 | 動物病院の開業不可 |
第一種住居地域 | 条件有動物病院開業可 |
第二種住居地域 | 動物病院の開業可 |
準住居地域 | 動物病院の開業可 |
近隣商業地域・商業地域 | 動物病院の開業可 |
準工業地域・工業地域 | 動物病院の開業可 |
工業専用地域 | 動物病院の開業不可 |
市街化調整区域 | 動物病院の開業不可 |
このように用途地域は細かく分類されています。
そして分類によっては開業できない地域もあります。
さらに自治体によってはさらに細かく区分けされていたり、上記の表とは異なったりする場合があります。
そのため開業場所を選ぶ時は開業できるかどうかを必ず調べるようにしましょう。
用途地域は公的役場や不動産会社で確認することができます。
開業を目前にして「実はその土地では開業できない」といったことにならないよう、事前準備は慎重にしましょう。
法律によって動物病院が設立できる地域とできない地域があります。
動物病院開業の流れ

開業をする前にしなければならない準備が2つあります。
それは必要書類の提出と人材の確保です。
もしどちらか一方でも欠けていれば、動物病院を開業することはできません。
スムーズに開業できるよう、それぞれどういった準備が必要なのかを見ていきましょう。
書類の提出
まず動物病院の新規開業のために書類の提出が必要です。
法人設立ということになるので、会社設立と同様に役所や税務署に対して書類を提出する必要があります。
特に税務署に関しては下記の書類をはじめ、多くの書類の提出が必要になるので、はやめに準備しておきましょう。
さらに医療機関という性質も持っているので、役所や税務署だけでなく保健所にも書類を提出して許可をもらう必要があるので要注意です。
保健所に提出する書類の多くは下記の通り、治療に必要なものに関するものです。
これらをはじめ、税務署や保健所などの公的機関に提出しなければならない書類や手続きは多くあります。
治療する領域の広さや自治体によって揃えなければならない書類は異なりますので、実際に問い合わせして調べてみるのが良いでしょう。
人材の確保
次に必要なのが人材の確保です。
動物病院では動物の命を扱うので必要となる人材の条件は厳しくなります。
代表的な例が獣医師です。
獣医師は各病院に少なくとも一人は在籍している必要がありますが、国家資格である獣医師免許を取得しなければなりませんりません。
もちろん獣医師免許の取得難易度は高いです。
また2022年からは愛玩動物看護士という国家資格も誕生しました。
今のところ愛玩動物看護士を各病院に配置しなければならないという法令はありませんが、「専門性の高い資格を持っているスタッフがいる病院に任せたい」と思う飼い主は増えてくるかもしれません。
開業するためには「公共機関への書類提出」と「専門人材の確保」が必須です。
動物病院の開業資金はいくら?

動物病院の開業資金は、一般的な会社の開業資金よりも多い傾向にあります。
少なくとも三千万円、できれば四千万円以上を目安に準備しましょう。
というのも高額な医療機器や薬品を揃える必要があるからです。
それ以外にも受付システムや電子カルテなどのシステムの導入費用も考えなければなりません。
なお受付システムに関しては下記の記事で詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。

とはいえ、もちろん病院の規模や治療内容などによって必要な資金には差が出ます。
また「病院を建てる土地を所有しているのか」や「改造や増築などによって病院を開業できるような建物を所有しているのか」によって建築に必要な資金は大きく変わります。
例えば自宅が改築や増築ができる上に、動物病院を開業できる用途地域に立っている場合だと、リフォーム費用だけで病院を建てることができるので、その分費用を抑えることができます。
病院を開業するのに何が必要なのかを洗い出し、それぞれ費用がどれくらいかかるかを計算することで、「自分の場合だとどれくらい資金が必要なのか」を明確にすることができます。
動物病院を開業するのに必要な資金は揃える機器や所有している不動産によって大きく異なります。
動物病院の開業を成功させるためには?

安定して動物病院を運営し続けるために最も重要なのは立地です。
先述した通り、用途地域が設定されていますので、どこにでも好きな場所に病院を構えることはできません。
しかし通いやすさを考えることは非常に重要なことです。
駅に近い場所で開業すれば、電車を利用して来る層が多くなります。
逆に車のアクセスが良い場所であれば、大型犬や老犬など車以外ではなかなか連れて行きにくいペットを飼っている人や、複数ペットを飼っている人からの来院が増えます。
また周囲に動物病院がほとんどない地域に開業すれば、その地域に住んでいる飼い主に利用してもらえるので、楽に集客することができます。
このように、どこに病院を構えるのかによって利用してもらえる確率が大きく変わってきますので、事前に入念な調査をしたり、綿密に計画を立てたりすることで、その先の運営をスムーズに進めることができます。
立地はどれだけ利用してもらえるかに大きな影響を与えます。
まとめ

動物病院はペットの健康を維持するために必要不可欠な存在です。
そのためペットという存在がいる限り必ず需要のあるサービスです。
立地や手続きなどの開業する際に注意しなければならない点や開業を成功させるために抑えておくべきポイントをしっかりと確認し、円滑に運営できるようにしましょう。
投稿者プロフィール

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ペッツファースト株式会社の店舗にて4年間勤務した責任者を中心に運営。在職時店舗運営、ペットの販売、店内環境整備、ペットの健康管理なども含め、ペットショップ全体の管理を行った経験を持つ。
◆保有資格:動物取扱責任者
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