動物病院スタッフの年収と、年収を上げる方法について、受付・看護師・獣医それぞれ解説しています。また動物病院の概要や業務内容についても紹介しています。
動物病院とは

ペットとして飼育されている動物の病気やケガの診察などを行う場所を動物病院といいます。
動物病院のほかにペットクリニックなどと呼ばれています。
スタッフには受付・看護師・獣医がいます。
規模に関しては数名の小規模な動物病院から数十人の動物病院まであります。
また動物病院の種類も様々で、以下のような種類があります。
- 個人病院
- 専門病院
- 夜間救急病院
- 往診専門病院
- 大学附属病院
まず個人病院は、ケガや病気を全般的に診る町のかかりつけ医です。
在籍している獣医は1、2名で、規模としては小さいです。
1次診療として機能している病院が多いです。
次に専門病院とは、眼科専門や循環器専門など、専門性の高い動物病院です。
また夜間救急病院とは、夜間のみ診察している病院のことを指します。
応急処置を施し、翌日以降はかかりつけ医に引き渡す役割を果たします。
往診専門病院は、ペットを病院まで連れていけない場合に利用される動物病院です。
飼い主の自宅に出向いて診察を行います。
また検査が必要な場合は病院まで送迎することもあります。
最後に大学付属病院は、獣医大学にある動物病院のことです。
特徴として高度な医療機器と最先端の治療法を提供している点が挙げられます。
そのため2次診療として診察しています。
動物病院にはさまざまな規模や種類があり、病気やけがの程度や飼い主の希望に合わせて選択されています。
動物病院スタッフの業務内容
看護師・獣医・受付に分けて動物病院スタッフの業務内容をそれぞれ解説していきます。
受付スタッフの業務内容

受付は来院した飼い主といちばん初めに接する、病院の顔ともいえる大切な仕事です。
具体的には主に以下があります。
- 受付
- 会計
- カルテ管理
- 電話対応
- DM作成、書類作成
- 清掃
まず受付では、来院した飼い主さんから診察券を預かり、カルテを用意します。
初診の方の場合は初診用の書類に記入してもらい、カルテを作成します。
また緊急性の高い場合は優先的に受付する臨機応変な対応も必要です。
次に会計では、処方された薬などを渡し、診察費を受け取ります。
その際に飼い主さんから薬について質問されることがあります。
とはいえ分からない場合は獣医や看護師に必ず確認しましょう。
次にカルテ管理ではカルテを直ぐ渡せるよう整理整頓します。
しかし電子カルテを導入する病院が増えているので、こういった作業は減少しています。
また電話対応することも多くあります。
例えば診察時間の確認や経過報告などで電話がかかってきます。
他にDMや書類の作成といった事務作業も大切な仕事です。
DM作成では、予防接種の時期が来たら、飼い主が忘れないようお知らせします。
書類作成では狂犬病関連で保健所に提出する書類などを作成します。
そして清掃は診察時間前後に受付が行います。
とはいえ最近では清掃専門のスタッフがいる場合があります。
このように受付の業務は、飼い主とのコミュニケーションや事務仕事が中心です。
看護師の業務内容

看護師は、獣医が診察をスムーズに進められるようサポートするのがメインの仕事です。
具体的には以下の業務内容が挙げられます。
- 診察の準備
- 保定
- 血液検査など検査機器の操作
- 入院患畜の世話、健康チェック
- 調剤
まず診察の準備では主訴を確認し、診察や検査で必要な器具を用意します。
次に保定とは、診察中に動物が動いてしまわないよう体をおさえることです。
保定はただ力任せにおさえ込むのではありません。
最小限の力で動物の動きを制御する必要があります。
1頭1頭性格は違うので、どのように保定するといいか見極めながら保定します。
血液検査では獣医の指示のもと必要な検査を行います。
例えば白血球・赤血球などの血球数や血糖値や腎臓の数値などを計ります。
機械の種類が多く、慣れるまで大変な仕事です。
また入院ペットの世話や健康チェックをするのも重要な仕事です。
具体的には異変がないか確認したり、エサを与えたり、ケージを清掃したりします。
特に術後の動物は様態が急変する可能性があります
そのため呼吸状態や脈拍数などをこまめにチェックしなければなりません。
調剤では、獣医が記入したカルテに書かれた薬剤と量を間違えないように行います。
小さい体の動物では、少しの薬剤量の間違いでも体調を悪化させる要因になります。
そのため間違いを犯さない慎重さが必要です。
上記のように看護師は専門的な知識や技術が求められています。
しかし今まで必須とされる資格はありませんでした。
ところが2022年5月に「愛玩動物看護師法」が施行されました。
これにより今後、動物看護師として働くには国家資格を取得することが義務となります。
ただ国家資格化されることにより、採血や採尿など一部の医療行為を看護師ができるようになります。
また看護師になるには国家試験に合格しなければならず、就業ハードルは高くなりました。
しかし国家資格化されることで社会的地位が向上することも期待できます。
獣医の業務内容

獣医は動物の診療をメインに行っています。
主な業務内容には以下のものが挙げられます。
- 病気、ケガの診察、治療
- リハビリ
- 臨床検査
- 健康診断
- 病気の予防
まず病気やケガの診察・治療では動物の検査・診断をし、投薬や手術などで治療します。
治療では飼い主の希望を尊重し、動物へのリスクや身体の負担、かかる費用などを考慮しながら治療方針を決めます。
リハビリは、手術後の機能回復や高齢犬の筋力維持など、さまざまな目的で行われます。
次に臨床検査には、血液・尿などを採取して行う検体検査と、心電図などを直接調べる生理機能検査があります。
臨床検査によって、異常の原因を調べたり、治療効果を確認したりできます。
また定期的な健康診断による病気の早期発見も大切な仕事です。
健康診断は年齢や予算によって調べる内容はかわりますが、一般的には血液検査・レントゲン・尿便検査が多いようです。
さらに詳しく調べるには、心電図・エコー・眼検査なども加えられます。
病気の予防では、細菌やウイルスによる感染症・伝染病から動物を守るために、予防接種や投薬などをします。
具体的には、狂犬病予防接種や、パルボウイルスなどを予防する混合ワクチン、ノミ・ダニの予防などがあります。
動物病院では受付・看護師・獣医がそれぞれ違った仕事を受け持ち、スムーズに診察が進むよう連携して働いています。
動物病院スタッフの年収
受付・看護師・獣医に分けて動物病院スタッフの給料をそれぞれ解説していきます。
動物病院の受付スタッフの平均年収

受付として動物病院で働くには特に必須の資格はなく、雇用形態には正社員とアルバイトがあります。
動物病院の正社員の平均月収は17〜20万円程が相場で、年収にすると250万前後が多いようです。
アルバイトの場合は時給1,000円前後が相場になっています。
動物病院の看護師の平均年収

動物病院看護師の給料は、地域や病院の規模により差が大きいですが、平均月収は15〜25万円、平均年収は200〜340万円前後となっています。
日本の平均年収は461万円なので、平均よりもだいぶ低い水準であるといえます。
動物病院のの平均年収

動物病院の獣医の平均年収は、勤務医と開業医とで異なります。
勤務医の場合、動物病院の規模・地域・勤続年数により差が大きいですが、平均月収33.6万円、平均年収は590.1万円となっています。
日本の平均年収よりも高いですが、動物病院の医師の責任の重さや業務のハードさを考えると、決して高い年収だとはいえません。
また人間の医師の場合は勤務3年目で年収800万円を超えることもめずらしくないので、医師という職業の中での動物病院の獣医の年収水準は低いといえます。
開業医の場合、多くの動物病院の平均年間売り上げは3,000万円ほどといわれていますが、獣医(経営者)の給料は売上の2割強が相場といわれているため、平均年収600〜800万円ほどになります。
近年動物病院の数が増え続けた結果、病院の飽和状態が起きており、年収500万に届かないケースもあるようです。
動物病院の獣医と聞くと高給なイメージをもつ人も多いですが、経営状況によっては年収と業務が見合わない仕事ではないといえるでしょう。
受付・看護師・獣医で給料に差はありますが、いずれも月収や年収は平均より低い水準となっていることが多いようです。
動物病院スタッフの給料の上げ方
動物病院スタッフはどのようにしたら給料が上がるのか、受付・看護師・獣医に分けて解説していきます。
受付スタッフの給料の上げ方

受付スタッフの場合、勤務年数により多少給料が上がっていきますが、大きな上げ幅は難しいことが多いようです。
外国人が多い地域の動物病院では英語力のある人が優遇されたり、HP作成・管理といったパソコン技術により昇給する場合もあります
看護師の給料の上げ方

看護師の給料を上げるにはまず資格取得することが大切です。
「愛玩動物看護師法」により、今後「動物看護師」と名乗って働くには国家資格取得が義務になります。
動物看護師が独占業務となるため、資格のない人との差別化を図ることができ、社会的地位の向上や給料アップにつながるでしょう。
また動物栄養士や動物介護士、ハイドロセラピストといった動物看護師に役立つ資格を取得し、スキルアップしていくことで給料が上がっていくケースもあります。
スキルを磨くことにより、より条件のいい動物病院に転職するチャンスも生まれるでしょう。
獣医の給料の上げ方

勤務医の場合はある程度勤務年数が経ち、仕事の幅が広がって責任ある仕事もこなせるようになると給料は上がっていくでしょう。
また以下のようなスキルアップのための行動も給料アップにつながります。
- 専門医の認定を受ける
- 新しい治療法や医療機器の勉強会、研修に参加する
- 学術誌に論文を投稿する
開業医の場合は、開業時の借入金を返済して病院の経営が安定してくると年収が1,000万円を超え、2,000万円ほどになるケースもあります。
病院の売り上げを伸ばせばその結果給料が上がるため、日々進歩する獣医療にアンテナを張り、患者を獲得できるように努力し続けることが大切です。
なお動物病院を開業する際に必要な情報を下記記事にまとめています。

また開業した場合はどのような課題があるのかについては下記記事で解説しています。
併せて読んでいただくと理解が深まるかもしれません。

受付・看護師・獣医とも資格やスキルアップにより給料が上がることがあります。
まとめ

動物病院のスタッフが給料を上げるには、資格を取得したり、勉強会・研修に参加したりと自身がスキルアップしていくことが必要です。
獣医療は日々進歩し続けているので、しっかりと情報収集し、飼い主さんのニーズに応えられる動物病院スタッフとなれるようにしましょう。
投稿者プロフィール

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ペッツファースト株式会社の店舗にて4年間勤務した責任者を中心に運営。在職時店舗運営、ペットの販売、店内環境整備、ペットの健康管理なども含め、ペットショップ全体の管理を行った経験を持つ。
◆保有資格:動物取扱責任者
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