動物病院の運営にはどのような資格や届出が必要なのか、また必要となる資金や医療機器の種類などを詳しく解説しています。
動物病院とは

主に動物のケガや病気の診察・治療や病気予防などを行い、動物の健康を守る場所を動物病院といいます。
獣医師・看護師・受付スタッフが働いており、それぞれが協力しながら動物の治療にあたっています。
動物病院には規模や診療科目によってさまざまな種類があり、大きく分けると以下の6種類があります。
- 町のかかりつけ動物病院
- 大学付属動物病院
- 夜間救急動物病院
- 往診専門動物病院
まず動物病院の数として一番多いのが、町のかかりつけ医として小動物診療をする動物病院です。
診療科目や動物種に関係なく幅広く診察していることが多いです。
また予防接種や健康診断などの予防医療にも対応しています。
ただ対応が難しい症例の場合は、大学付属病院等に紹介状を書きます。
次に大学付属動物病院とは獣医学科を有する大学にある動物病院です。
施設の特徴として最先端の医療機器が揃っています。
紹介状のみ受け付けており、2次診療施設として利用されます。
次に夜間救急病院では、かかりつけの動物病院が開いていない時間帯の体調不良やケガなどに対応しています。
応急処置をし、翌朝かかりつけに行ってもらう流れが多いようです。
往診専門動物病院は、車がなく病院に連れて来られない人や、寝たきりのペットなどを自宅で診察できる動物病院です。
レントゲンや血液検査などの検査もその場で実施できます。
このように動物病院は病院ごとに規模や得意な診療科目が違います。
そのため、どの病院に行くかを飼い主が判断する必要があります。
動物病院は動物の健康を守るための施設で、町のかかりつけ医の他、診察科目や動物種を限定した動物病院や救急・往診専門病院などさまざまな種類があります。
動物病院運営のための資格・届出とは
病院運営には、資格や届出が必要です。
ここでは動物病院を運営するうえで必ず必要になる資格や届出を詳しく解説していきます
動物病院運営に必要な資格・届出1:診療施設開設届

日本で動物病院を運営するには、獣医師免許を有する者が獣医療法第3条に基づく「診療施設開設届」を都道府県知事に提出しなければなりません。
提出時には動物病院の見取り図や、獣医師免許の写し等も必要です。
動物病院運営に必要な資格・届出2:エックス線装置設置届

診療施設でエックス線を使用する場合には、「エックス線装置設置届」を管轄の保健所に届け出る必要があります。
「エックス線装置設置届」の提出には、製作者名・型式・台数・主な用途などのエックス線装置の概要と、エックス線診療室の平面図及び側面図、エックス線室漏洩放射線測定報告書を添付しなければなりません。
エックス線室漏洩放射線測定報告書の有効期限は測定から6か月です。
その後、届出事項に関して「飼育動物診療施設立ち入り検査」が行われます
その際に不備があれば改善が求められます。
動物病院運営に必要な資格・届出3:動物取扱業届出書

入院や預かりなど動物を保管する場合、各都道府県の「動物の保護及び管理に関する条例」に基づき、「動物取扱業届出書」を提出します。
動物取扱業の提出の際には、動物病院の職員から1人「動物取扱責任者」の資格を持つ人を定めなければなりません。
動物取扱責任者の資格は、獣医師国家資格を持っていれば、都道府県が主催する講習会を受けた後に申請することで取得できます。
上記の他、必須ではありませんが獣医師会に加入することもおすすめです。
もちろん獣医師会は入会金や会費がかかります。
しかし自然災害等で損失が起きた際の支援などメリットも多くあります。
なお動物病院開業に必要な資格は下記記事でもまとめています。
そのため併せて読むと理解が深まるかもしれません。

動物病院運営には、「診療施設開設届」「エックス線装置設置届」「動物取扱業届出書」の届出が必要です。、立ち入り検査を受けるものもあります。
動物病院運営に必要なもの
病院を運営するには多くの機器や備品、資金と診療を支えるスタッフが必要です。
以下では、必要なものをそれぞれ詳しく解説します。
診察・医療機器

動物病院の運営にはまず、診察や検査に必要な医療機器や用品を揃える必要があります。
もちろん診察する動物種や、どの診療科目に特化した動物病院にするかなどで必要な医療機器等は異なります。
しかし下記のものは最低限必要となります。
- 診察台
- 手術台
- パソコン
- 耳鏡
- 口腔鏡
- エリザベスカラー、口輪
- 分包機
- 犬舎や猫舎のケージ
- エックス線撮影用 防護用エプロン、被ばく測定器具
- 遠心分離機
- 血液検査機器(血球算定機、生化学検査機器など)
- 顕微鏡
- 減菌機
- 全身麻酔機
- バイタルモニター
- 輸液ポンプ
- 酸素室
- エックス線装置
- エコー
- 心電図
とはいえ上記のものは動物病院を運営するうえで最低限必要なものの一例です。
他の備品は売上の様子を見て揃えていくといいでしょう。
また動物病院運営には「賠償責任保険」加入も重要です。
動物病院では命を扱います。
つまりスタッフのミスで取り返しのつかない事故が発生することもあります。
保険に入っていないと、多額の賠償金により運営していけなくなる事態もあり得ます。
そのため賠償責任保険加入は大切です。
獣医師個人や動物病院向けの損害賠償保険を扱う保険会社もあります。
想定されるリスクに合った保険に入るようにしましょう。
スタッフ

開業してすぐは、人件費をかけずに一人で運営しようと思う方もいるかもしれません。
しかし開業してすぐでもスタッフは雇ったほうがいいでしょう。
というのも来院数が少なくても、診察中に誰か来院しても受付に出られなかったり、電話がかかってきても対応できなかったりと、一人で動物病院の業務を回すのは困難だからです。
また診察時に暴れるペットも多く、診察の補助が必要になる場面も多くあります。
そのため診察や治療など、獣医師にしかできない仕事以外は他のスタッフに任せたほうがスムーズに診察が進み、飼い主の満足度も上がります。
動物病院の業務がうまく回ることは、結果的に病院の売上アップに直結します。
そのため多少の費用を割いてでもスタッフを雇うようにしましょう。
とはいえ中にはなかなか人手が集まらない場合もあります。
そこで「どのように求人すればよいか」「どのような求人方法が良いか」については下記記事で解説しています。
併せて読んでいただくとヒントが得られるかもしれません。

またスタッフの負担を減らすために予約システムを導入する病院もあります。
予約システムについては下記記事で詳しく解説しています。
ぜひ参考にしてください。

資金

動物病院の運営には多くの資金が必要です。
もちろん動物病院の規模やスタッフの数などによります。
しかし一般的には開業にあたって3,000万円〜5,000万円ほどかかります。
また揃える医療機器によっては1億円ほどかかる場合もあります。
そのため高額なので融資が必要になることが多いです。
ただ融資の審査を通すためにも、自己資金を出来るだけ多く用意するといいでしょう。
具体的には最低でも600万円〜1,000万円は用意する必要があるでしょう。
融資先は銀行の他、日本政策金融公庫の利用もおすすめです。
日本政策金融公庫は個人事業主や中小企業を支援する組織です。
日本政策金融公庫からの借入には下のメリット・デメリットがあります。
- 銀行に比べ金利が低い
- 無担保・無保証の融資制度がある
- 銀行より長い借り入れ設定ができる
- 審査期間が長い
- 支店や担当者を選べない
上記のように日本政策金融公庫は個人事業主が借入しやすい制度になっています。
とはいえ申請してから融資を受けるまで1か月程度かかることあります。
そのため急ぎの融資を希望する場合には不向きです。
また担当の支店は納税地の住所から判断されるため、申請者の状況によっては不便になることもあります。
動物病院は、運営に必要な医療機器などを揃えるための資金や、診療をスムーズに行うためのスタッフが必要になります。
動物病院運営までの流れ
病院を運営するまでには、どのような流れになるのか解説していきます。
立地や病院の確保

動物病院の立地は、売り上げを大きく左右します。
立地選びには、まず商圏範囲を決めることが大切です。
動物病院での商圏範囲とは来院してもらえる範囲のことを指します。
具体的には車で10〜15分程度が目安になります。
立地選びの際は、アクセスの良さだけでなく、周辺の人口やペット飼育率などを踏まえて考えることも大切です。
都心に近いと人口が多く、集客しやすいですが、建物の家賃などの固定費が高かったり、競合の動物病院が多かったりといったデメリットもあります。
地方では家賃などは安いことが多いです。
しかし人口が少なく集客に苦労するケースもあります。
このように、どちらにもメリット・デメリットが存在します。
そのためコストや競合性・集客のしやすさなどのバランスが取れた立地をみつけられるよう調査をしましょう。
また動物を連れて来院するので、階段や駐車場の有無も重要です。
このように立地は運営に大きく影響を与え、時には経営の課題にもなります。
なお動物病院が直面する課題を下記記事で紹介しています。
併せて読むと事前に対策を練ることができるかもしれません。

スタッフの採用

スタッフ募集の際におすすめなのが求人サイトです。
というのも70%の求職者はネットで求人を探すといわれているからです。
もちろん動物業界に特化した求人サイトも多くあります。
スタッフを募集するには、業務内容や休憩時間などを明示することが職業安定法で定められています。
また求人情報の内容が少ないと求職者側としても応募しにくくなります。
そのため経営方針やスタッフの写真などを載せて病院のイメージが付きやすいようにするといいでしょう。
また求人サイトには掲載料が無料と有料のものがあります。
無料のものは費用が掛からない反面露出度が低い傾向にあります。
そのためより多くの求職者の目に留まるよう有料の求人サイトも積極的に利用しましょう。
医療機器の調達
医療機器の調達は多くの資金が必要で、最低限揃えたとしても1,000万円程度かかります。
そのため将来的に設置する予定のものも含めて計画し、まずは最低限必要なものを揃え、売上などの様子を見ながら追加で揃えていくのがおすすめです。
また医療機器を購入するのが難しい場合、リースする方法もあります。
リースは月々の支払いなので初期費用が抑えられ、メンテナンスや故障時にすぐ対応してもらえたり、固定資産税や減価償却などの機器にかかる費用がリース会社持ちになるというメリットがあります。
ただしリースの多くは5年か7年契約が一般的で、途中解約ができません。
もし途中で解約する場合、違約金や残りのリース料などを支払わなければならなくなります
そのため実際導入してみて使用する機会がなくても支払い続けなくてはなりません。
またリース機器の金額によっては、リースの合計金額が医療機器の価格より高くなることもありますが、リース期間が終わっても自分のものにならないというデメリットもあります。
届出の提出

上記で解説した「診療施設開設届」「エックス線装置設置届」「動物取扱業届出書」などの書類を管轄の公的機関に提出します。
立ち入り検査が必要になるものもあるので、余裕をもって早めに提出しましょう。
手続きは種類が多く複雑なため、動物病院専門のコンサルタントに委任する人もいます。
専門家が正確・迅速に処理してくれるため、時間のない人や事務作業が苦手な人にはおすすめです。
動物病院を運営するには、立地や病院の確保・スタッフや医療機器の調達・届出の提出という流れになります。
まとめ

動物病院の運営には必要な届出・資格があり、立ち入り検査などが必要なものもあるため早めに申請しておきましょう。
また開業に際して多くの資金が必要になるため、できる限り自己資金を用意しておくことが大切です。
動物病院の運営を左右する立地選びや、診察をスムーズに行うためのスタッフ・医療機器の導入など、しっかりと準備して開業に臨むようにしましょう。
投稿者プロフィール

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ペッツファースト株式会社の店舗にて4年間勤務した責任者を中心に運営。在職時店舗運営、ペットの販売、店内環境整備、ペットの健康管理なども含め、ペットショップ全体の管理を行った経験を持つ。
◆保有資格:動物取扱責任者
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